うちの父は病院が嫌いだった。
自分がどんな状況でも我慢して周りにも相談せず倒れて、
あげくの果てに救急車で運ばれることが多かった。
これまでに、癌、大動脈瘤破裂、低血糖で意識障害など
大病を繰り返してきた。
その度、「少しでも体調に異変があればすぐに医者に行くか、
教えて。」と繰り返し言ってきたが、
ある日、父は「俺の体だっ、お前には関係ない!」と怒鳴った。
わたしはその言葉にこれまでの心配が一気に怒りに変わり、
「もう知らねっ、勝手にしろっ!」と突き放した。
その日から父への怒りは収まらず、10年以上会わなかった。
そんな父も、歳には勝てず最近、他界した。
その後、父の遺品を整理していると数本の8mmテープが
出てきた。
投影機は壊れているようで見ることができない。
映像関連の業者に頼んでDVDにしてもらった。
映像は無声ではあったが、父の楽しそうな顔の先には
はしゃぐわたしがいた。
その光景に怒りは悲しみに変わり、そして涙が込み上げてきた。
「父さん、ごめん。」と心で謝った。
(神奈川県・男性)